コインランドリー経営・開業お役立ちコラム
「節税対策としてコインランドリー経営を始めたい」「節税に利用できる制度を知りたい」と考えていませんか。最初に結論を述べると、コインランドリー経営は節税効果が期待できるビジネスといえます。
ただし、2023年度の税制改正により、一定の制約が加えられています。現在の制度を正しく理解したうえで、節税対策を講じることが重要とされています。
この記事では、2023年度税制改正の影響に加え、節税対策としてコインランドリー経営が検討される理由や、取り組む際の注意点などを解説します。理解を深めたい方は参考にしてみてください。
コインランドリーと関わりが深いおもな税制は次のとおりです。
関わりが深い税制 | 中小企業経営強化税制 | 中小企業投資促進税制 |
対象 | 青色申告を選択している中小企業などで、中小企業等経営強化法で定める経営力向上計画の認定を受けている特定事業者など | 青色申告を選択している中小企業等、または従業員1,000人以下の個人事業主 |
対象設備 | 一定の要件を満たす設備 | 一定の要件を満たす設備 |
措置内容 | 即時償却または取得価額の10%の税額控除 | 30%の特別償却または取得価額の7%の税額控除 |
コインランドリー業もこれらの税制の対象です。ただし、2023年度税制改正を受けて、以下の要件が加えられました。
【新たに加わった要件】
つまり、副業でコインランドリーを経営している場合は、税額控除などを受けるには、事業者自身も管理に関与することが求められます。
出典:中小企業庁「中小企業経営強化税制」
2023年度の税制改正後も、以下の制度を節税に利用できます。
経営力の向上を目指す中小企業を対象に設備投資をサポートする税制です。令和7年度税制改正により、適用期限が2026年度末まで延長されました。国税庁は、制度の概要を次のように説明しています。
新品の特定経営力向上設備等の取得または製作もしくは建設をして、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却または税額控除を認めるものです。
引用:国税庁「No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」
具体的には、即時償却または取得価額の10%(条件により7%)の税額控除が選択可能です。適用を受けるため、経営力向上計画の認定を受ける必要があります。
コインランドリー業には適用制限が設けられている点にも注意が必要です(詳しくは「自身もコインランドリー経営に携わる」で解説します)。
中小企業の設備投資をサポートする税制です。本制度も、令和7年度税制改正により、適用期限が2026年度末まで延長されました。国税庁は、中小企業投資促進税制の概要を次のように説明しています。
新品の機械装置などの取得または製作をして、国内にある製造業、建設業などの指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却または税額控除を認めるものです。
引用:国税庁「No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」
具体的には、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除を選択できます。「対象は青色申告を行っている中小企業です。コインランドリー業も含まれますが、適用に一定の制限が加えられているため詳細を確認しておく必要があります(詳しい条件は「自身もコインランドリー経営に携わる」で解説します)。
所定の機械・装置を取得した場合に、翌年から固定資産税の特例措置を受けられる制度です。対象は、以下の条件を満たすもののうち市町村から先端設備等導入計画の認定を受けたものです。
【対象】
特例措置の内容は次のとおりです。
要件 | 措置内容 |
雇用者給与等支給額が1.5%以上増加すると表明した場合 | 課税標準額を3年間にわたり1/2に軽減 |
雇用者給与等支給額が3.0%以上増加すると表明した場合 | 課税標準額を5年間にわたり1/4に軽減 |
この制度を活用することで、設備投資の負担を軽減できる可能性があります。
出典:中小企業庁「固定資産税の特例(中小企業等経営強化法による支援)」
相続した土地の評価額から、一定割合の評価減を受けられる制度です。被相続人などが貸付事業以外の事業に用いていた宅地などで、次の条件に該当する場合は、400㎡を限度として80%の評価減を受けられます。
相続税額の軽減が期待できる制度です。
参照元:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
一般的に、コインランドリーは優れた節税対策になりうると考えられています。主な理由は以下のとおりです。
理由のひとつとして、複数の節税方法を活用できることがあげられます。具体的な選択肢は以下のとおりです。
【節税方法】
複数の制度を活用して、節税効果の向上が期待できます。現在の状況にあわせて、対策を選択できる点も魅力です。
中小企業経営強化税制を活用して、対象設備を取得などすると以下のいずれかを選択できます。
【選択肢】
即時償却は対象設備の所得にかかった費用を購入年度に一括で計上すること(通常は耐用年数にわけて計上)、税額控除は算出した税額から一定金額(この場合は所得価額の10%または7%)を差し引くことです。したがって、多額の設備投資をした場合は、高い節税効果を期待できます。自社にとって有利な方法を選べる点もポイントです。
節税対策を検討するうえで、注意したいのが事業の運営にかかる手間です。節税効果が優れていても、手間がかかると本業に集中できません。
もちろん、スタッフを採用することはできますが、この影響で身動きがとれなくなることもあります。コインランドリーであれば、運営に多くの手間はかかりません。また、管理業務を外部の事業者へ委託することもできます。節税対策として検討しやすい選択肢といえます。
続いて、税制改正後における節税の注意点を解説します。
2023年度の税制改正で、コインランドリー業に関わる節税に制約が加えられました。主な注意点は以下のとおりです。
対象 | 注意点 |
中小企業経営強化税制 | ・主要な事業(コインランドリー業)で使用する設備が対象
・該当しない場合は管理の大部分を他の者に委託していないこと |
中小企業投資促進税制 | ・コインランドリー業で使用する機械装置で管理の大部分を他の者に委託しているものは対象外(主要事業として実施している場合は除く) |
副業として店舗を運営していて、これらの税制を利用したい場合は、オーナーも管理・運営に携わる必要があります。すべての管理・運営業務を外部の事業者へ委託する場合は、以上の税制を利用できない恐れがあります。
出典:中小企業庁「中小企業経営強化税制」
中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制とも、2025年7月時点における適用期限は2026年度末(2027年3月31日)です。
令和7年度税制改正で延長されましたが、今後も同様に延長され続ける保証はありません。2026年度末で税制そのものが廃止になることやコインランドリー業により厳しい制約が加わることも考えられます。
節税対策としてコインランドリーを検討している方は、早めに意思決定することも選択肢のひとつです。
続いて、新税制に対応しつつ、コインランドリー経営を成功させるコツを紹介します。
施策の精度を高めるため、市場調査を行うことが大切です。具体的な調査項目として以下の点などがあげられます。
【調査項目】
たとえば、見込み客の中心がファミリー層であれば、大型洗濯乾燥機の需要があると予想できます。競合店が大型洗濯乾燥機を設置していなければ、導入により差別化を図れる可能性があります。
店舗の運営方針を決めるため、市場調査で必要な情報を集めましょう。
関連記事:コインランドリー経営に重要な立地条件について徹底解説
コインランドリーの商圏はあまり広くありません。安定した経営を目指すには、リピーターの獲得が重要です。一定のニーズを見込めて、競合店が対応していないサービスを提供すると、リピーターを獲得しやすくなります。ちなみに、ここでいうサービスは、洗濯・乾燥だけに限られません。わずかな気遣いであっても差別化を図れます。
また、リピーターを獲得するため、利用者数を増やすことも大切です。利用者数が伸びないと、原則としてリピーターも増えません。必要に応じて、地域の住民にクーポンを配布するなどの集客施策を検討するとよいでしょう。
積極的な設備投資も欠かせません。設備が揃っていないと、見込み客のニーズに応えられないためです。具体例として、大型洗濯乾燥機、スニーカーランドリー、キャッシュレス決済機などがあげられます。設備を導入する場合は、見込み客のニーズを踏まえることが大切です。
また、省エネ性能が高い設備を導入して、ラニングコストを抑えることもできます。経営を安定させるため考慮したいポイントです。
関連記事:コインランドリー機器の減価償却について|耐用年数と節税のポイント
当然のことながら、コインランドリーは汚れた衣類などを洗濯・乾燥するサービスです。店舗が不衛生だと、それだけで敬遠される恐れがあります。しかし、汚れた衣類を持ち込むため、店内は汚れやすい傾向があります。したがって、小まめな清掃を心がけて清潔な環境を維持することが大切です。参考に、清掃したい箇所を紹介します。
頻度 | 箇所 |
毎日の清掃 | 床、テーブル、椅子、機器の扉・窓、洗濯ドラム、乾燥機のフィルターなど |
定期的な清掃 | ダクト、機器の内部、エアコンのフィルター、店舗のガラス、店舗の看板など |
清潔な環境は顧客に安心感を与えます。
顧客の利便性を考えて、環境や設備を整えることも大切です。具体的な取り組みとして以下のものがあげられます。
【利便性を高める取り組み】
たとえば、無料Wi-Fi、ドリンクサービス、雑誌、漫画を提供すると、店舗内で待ち時間を有意義に過ごせるようになるでしょう。満足度やリピート率の向上を期待できます。店舗のコンセプト、顧客のニーズを踏まえて施策を検討することが重要です。
経費を削減することも、コインランドリー経営を成功に導くコツです。無駄な経費をかけていると利益が減ってしまいます。参考に、経費を削減するため見直したいポイントを紹介します。
【経費削減のポイント】
ただし、サービスに関わる経費を削減するときは注意が必要です。必要な経費を削減すると顧客満足度が低下してしまいます。客離れにつながる恐れがあるため、サービスに関わる経費は慎重に削減しましょう。
適正価格を意識することも大切です。価格設定を誤ると、十分な顧客数を確保できているにもかかわらず利益を残せなかったり、価格が理由で顧客から敬遠されたりする恐れがあります。地域のニーズと競合店の動向を調査したうえで、経営が成り立つ価格設定を行いましょう。
同様に、価格競争にも注意しなければなりません。競争が激しくなると、共倒れになることも考えられます。価格以外のポイントで差別化を図ると、価格競争に巻き込まれにくくなります。具体的な取り組みとして、競合店にない機器を導入する、プラスαのサービスを提供するなどがあげられます。
SNSの活用も検討したい取り組みです。適切に活用すると、コストを抑えつつ見込み客にアピールできます。活用のポイントは以下のとおりです。
【ポイント】
各SNSの特徴、ユーザーを踏まえて、コンテンツを制作することも大切です。
ここからは、コインランドリーを活用した節税に関する質問に回答します。
コインランドリーに導入する設備は「洗濯業・理容業・美容業・浴場業用設備」に分類されます。同設備の耐用年数は13年です。耐用年数は、減価償却費を計上できる期間といえるでしょう。
したがって、取得にかかった費用を、13年かけて計上することになります。費用を一括で計上したい場合は、中小企業経営強化税制の活用を検討できます。
利用する場合は、設備を取得する前に手続きのフローを確認しておくことが大切です。
関連記事:コインランドリー機器の減価償却について|耐用年数と節税のポイント
消費税の還付は、受けられるケースと受けられないケースにわかれます。仕入れなどで支払った消費税額が顧客から受け取った消費税額より多い場合は還付を受けられます。
目安を理解したい方は、開業にかかった資金と初年度の売上を比較するとよいかもしれません。
前者のほうが多い場合は、消費税の還付を受けられる可能性があります。コインランドリーは初期投資額が大きいため、消費税還付を受けやすいと考えられています。
ここでは、コインランドリーの節税について解説しました。中小企業経営強化税制を始めとするさまざまな制度を活用できるため、コインランドリー経営は節税効果の高い取り組みといえます。
ただし、管理の大部分を他者に委託すると、制度の対象外になることがあります。詳細を確かめてから、店舗を運営することが大切です。節税対策でコインランドリー経営を始めたい方は、ニドコインランドリーにご相談ください。1,000件以上の開業に関わった経験を活かし、出店計画からアフターメンテナンスまでノウハウを提供いたします。
この記事の監修者
横山 秀二 (ヨコヤマ シュウジ)
株式会社ニド 営業部長
《経歴・略歴》
工業高校(機械科)を卒業後、車業界へ就職、その後機械に興味を持ちランドリー業界に転職
《事業への思いや強味》
車業界で機械修理と営業職を行ってきたので、営業+機械修理などの技術職が得意です。
ランドリー業界の仕事も車の仕事と似た所が有り、新規営業などを行いながら機械修理を行うので、営業+機械修理が得意です。また、販売して終わりでなく販売してからが長いお付き合いと思いながら取り組んでおります。